2016年に行われた第81回日本オープンゴルフ選手権最終予選での出来事です。
会場となった紫カントリークラブすみれコースは私も大好きな素晴らしいコース。
2020年には第85回日本オープンゴルフ選手権が開催されていますし、2022年には第55回日本女子オープンゴルフ選手権の開催が予定されています。
その事件は綺麗に刈り込まれた砲台グリーン手前の斜面で起こりました。
きつい傾斜を登り切ったギリギリの位置に止まったボールは、いまにも動きそうな状態です。ボールが動かないように慎重に歩み寄り、これからアプローチをしようとした同伴競技者が、突然私たちに向かってこう言いました。
同伴競技者:「今のは動かしたことになりますか?」
私たち:「???(何が???)」
彼以外には、誰もボールが動いた事に気がついていません。
同伴競技者:「今、ボールが動いたんです。私がボールを動かしたことになるのかと思って。」
2019年のルール改正前の試合なので、アドレス後(=ソールした後)にボールが動くとペナルティーになりますが、彼はアドレスをしていません。
問題となるのは彼がボールを動かす原因を作ったかどうかです。
私たちには彼が原因を作ったようには見えなかったので、そのままプレーを続行しホールアウト後に確認することにしました。
競技委員:「どんな状況でしたか?」
同伴競技者:「グリーン手前の傾斜にボールが止まっていました。今にも動きそうな状況だったので慎重に近づいて構えようとしました。ソールしたらボールが動くかもしれないと思ったので、クラブも空中に浮かせていたのですが、テークバックする直前にボールが動いたんです。」
競技委員:「構えた時(足の位置を決めた時)は動かなかったのですよね!?クラブも地面につけてないのなら自然に動いたんじゃないですか?一緒にプレーされていた方はどう思われますか?」
私たち:「すぐそばで見ていましたが、ボールが動いたことすら気付きませんでした。」
競技委員:「自然に動いたのであればペナルティーはつきませんよ。自分が動かしたと思いますか?それとも自然に動いたと思いますか?」
同伴競技者:「……。」
競技委員:「他の方も彼がボールが動く原因を作ったようには見えなかったんですよね?!」
『ペナルティーはつかない』と話がまとまろうとしたその時…
同伴競技者:「ボールに近づいていく時の振動で動く原因を作ったかもしれないのでペナルティーを払います」
競技委員は彼にペナルティーが付かないように誘導していました。
しかし、彼の中では何か思うことがあったのでしょう。
本人以外に誰もジャッジができないというゴルフならではの事例ですが、皆さんはどう思われますか?
ルールは奥が深いですね!
【補足説明】
事件の起きたホールでは「ボールが動いたようには見えないし、たとえ動いていたとしても彼が動かす原因を作ったとは思えない」という点から、「彼にペナルティーはなくボールは止まった位置からプレーを続行する」という判断をしてプレーを続けました。
しかし、彼はホールアウト後に「自分が動かした」という結論を出したため、ボールを元の位置に戻さずにプレーしたとして2打罰になりました。
次回は「プロゴルファーとアマチュアゴルファーのコース攻略の違い」についてお話していきたいと思います!